食品パッケージと資料を突き合わせて表示内容を確認する管理栄養士の手元
発酵食品ビジネスのつくり方 第3章

科学的根拠、機能性、表示の設計

「腸に良い」「免疫を支える」といった価値を伝えるには、原料や菌株、摂取量、対象者、試験条件を整理し、商品に対応する根拠を蓄積します。

食品パッケージと資料を突き合わせて表示内容を確認する管理栄養士の手元
食品パッケージと資料を突き合わせて表示内容を確認する管理栄養士の手元

「腸に良い」「免疫を支える」といった価値を伝えるには、原料や菌株、摂取量、対象者、試験条件を整理し、商品に対応する根拠を蓄積します。

根拠と商品を対応づける

研究結果をそのまま広告表現に置き換えるのではなく、その研究が自社商品に当てはまるかを確認します。菌株が同じでも、摂取量、摂取期間、対象者の年齢や健康状態、併用食品が異なれば、結論をそのまま適用することはできません。

根拠を商品に適用する際の照合項目
照合項目確認することずれている場合の扱い
菌株・原料研究で使われた菌株番号と自社使用菌株が一致するか属レベルの一致では根拠にならない
摂取量研究の1日摂取量を自社商品で満たせるか満たせない場合は当該根拠を使えない
摂取期間効果が確認された期間と、想定する継続期間短期間の使用を前提とした訴求はできない
対象者年齢層、健康状態、基礎疾患の有無対象が異なる場合は適用範囲を限定する
評価指標何が改善したと報告されているか指標を拡大解釈した表現はできない
研究の質査読の有無、対照群、被験者数、資金提供元質が低い研究は届出の根拠として不十分

表示制度の選択肢と要件

健康に関する機能を表示する場合、制度上の枠組みを選ぶ必要があります。制度を使わずに機能を訴求すると、健康増進法や景品表示法の観点で問題になる可能性があります。

健康に関する表示制度の比較
制度求められる根拠手続き向いているケース
特定保健用食品(トクホ)個別の臨床試験、国の審査消費者庁の許可が必要。期間・費用とも大きい主力商品として長期に展開する場合
機能性表示食品臨床試験または研究レビュー事業者の責任で届出。受理後に販売可能根拠を用意でき、機能を明示したい場合
栄養機能食品定められた成分と含有量の基準基準を満たせば届出不要ビタミン・ミネラルの補給を訴求する場合
一般食品機能性の表示は不可手続き不要味・原料・製法・食文化で訴求する場合

機能性表示食品では、届出、科学的根拠、品質管理、表示内容、販売後の情報提供を一貫させることが重要です。届出が受理されることがゴールではなく、届出内容と実際の製造・表示・広告が一致し続けている状態を維持する必要があります。

プロ/プレ/ポストバイオティクスを正確に使う

プロバイオティクス、プレバイオティクス、ポストバイオティクスは作用や扱いが異なるため、用語を正確に使い、消費者が過度な期待を抱かない説明にします。用語の混同は、それ自体が誤認を招く表示になり得ます。

関連用語の定義と表示上の留意点
用語指すもの表示上の留意点
プロバイオティクス生きた微生物で、適量摂取により有益な作用をもたらすもの生菌数の表示根拠と賞味期限末期での保証が必要
プレバイオティクス有用菌の増殖・活性を促す難消化性の成分「菌が入っている」との誤認を招く表現を避ける
シンバイオティクスプロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせ組み合わせによる上乗せ効果は別途根拠が必要
ポストバイオティクス菌体成分や代謝産物など、生菌でないもの生菌訴求と混同しない。生残性の課題がない点は利点
短鎖脂肪酸腸内細菌が食物繊維から産生する代謝産物体内での産生量は個人差が大きく、断定表現を避ける

広告表現の線引き

食品として許される表示と、医療的な誤認を招く表現を区別します。商品パッケージだけでなく、Webサイト、SNS、店頭POP、インフルエンサーの投稿、顧客の体験談の掲載方法まで、すべてが広告として扱われます。

  • 疾病の治療・予防を想起させる表現:特定の病名を挙げて改善・予防を示唆する表現は、食品では使用できません。
  • 体験談の扱い:個人の感想であっても、商品の効果を示す目的で使えば効果の表示とみなされます。打ち消し表示を小さく添えるだけでは免責されません。
  • 試験結果のグラフ:届出範囲を超える指標や、軸を強調した表現は、実際以上の効果を示す表示になり得ます。
  • 「No.1」等の優良性表示:調査の対象・期間・出典を明示し、実態と一致していることが必要です。
  • インフルエンサー施策:対価を伴う投稿は広告であることを明示します。表示内容の責任は依頼した事業者にも及びます。

社内では、販促物の作成フローに表示チェックの工程を組み込むことが有効です。チェックする人と作る人を分け、根拠台帳と照合する手順を明文化してください。

販売後の情報提供と見直し

機能性表示食品では、販売後も情報提供の責任が続きます。健康被害の情報を受け付ける体制、届出内容の変更手続き、新たな科学的知見が出た場合の対応を定めておきます。

  1. 問い合わせ窓口:健康被害の申し出を受け付け、記録し、必要に応じて報告する経路を整備します。
  2. 記録の保管:申し出内容、対応、医師の関与の有無を記録し、一定期間保管します。
  3. 定期的な文献確認:使用している菌株・成分に関する新しい報告を定期的に確認します。
  4. 表示の見直し:根拠が揺らいだ場合、表示・広告の修正または販売方針の変更を判断します。
  5. 製造記録との照合:届出した含有量が実際の製品で維持されているかを、定期検査で確認します。

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